「あ……んっ……。」
背中に爪を立てながら拙く喘ぎ声も漏らしてしまう少年。
もうこの行為も随分と慣れたのだが、
久しぶりの体位になぜか恥ずかしさを隠せずにいた。
「い、ぁ……んっ。」
わき腹をこすられて、耳にふっと息をふきかけられて
ほんの少しだけ声が高くなってしまう。ひくりと少年の腰がうずいた。
「随分といいみてーじゃねぇか。」
こういうことのときだけ出す、いつもより掠れた声で男はそんな風に少年を笑う。
「ば、かにすん……な、っ。」
そうは反抗しても所詮そんな反応は相手を煽るだけで、
少年には更なる愛撫が容赦なく襲ってくる。
「ひぃっ、っぐ、ん……。」
思わずぎゅっとまた縋りつく手に力がこもってしまう。
爪も当然食い込んでしまったわけで、痛くしてしまったかもしれないと慌てて
鮮明に残る紅い爪痕を見る。

ふと違う何かが目についた。



んだよ……これ!













紅い痕












「なんだ、イェンス?急に静かになりやがって。」
「き、キア!……なんでもねーよ……。」

思わず動揺してしまった。
イェンスと呼ばれた少年がそこに見たのは同じような紅い痕だったのだから。
しかし絶対に自身がつけたものではないと思った。
こうなると大抵イェンスがつける爪痕の位置は同じだ。
恥ずかしいとは思いながらもいつも目にしているのだ、
間違えるはずはないと自身、確信が持てた。

しかしそんなことを言ってしまったら、
今の気持ちそのまま図星を刺されそうで納得いかないと
イェンスは懸命に首をふって
むしろそこにちゅっ、と強く吸い付いてみる。

こんなの……!
キアのバカ!

同時にキアからはくぐもった喘ぎが漏れ、煽るな、と甘ったるい声。
イェンスはずるっとはいていたズボンを下ろされパンツを脱がされ
一気に外気に晒されたものを握りこまれてしまった。

「ひっ……!」
驚きとその急激な快感の波に高鳴る声。
眩暈がしそうなくらいの強い衝撃。
イェンスは思わずその手を力ませ、背をのけぞらせた。
「へっ、相変わらずいい声で啼くな。」
強く握りこまれたと思ったら今度は優しく擦りあげるように触れられて
イェンスはたまらず声をあげる。
そんなんじゃない、と反抗したくても甘い喘ぎ声と荒い息使いに全てがかき消されていく……。

「ん……あぁ、んんっ。」
下半身だけむき出しというのがなんとも淫らだ。
抜群の加減で触れてくる大きな手に身体がみるみるうちに震えて
自身も少しずつ勃ちあがっていく。
「や……ぅ、あぁっ。」
イェンスの勃ちあがりかけたものがキアのお腹に擦れる。
否、キアはわざとそれをやって、楽しんでいるのだ。
そんなこととは露知らず、イェンスはそれがなんだか無性に恥ずかしくて
上手くずらそうとするのだが、その度になじられて声をあげさせられる。
結局どうしようもなくなり、
擦れてはまた勃ちあがっていく自身に目を背けることしかできなかった。
しかしそむけようとするとまた目がいってしまう、

紅い痕

俺以外に誰にこんなことさせてんだよ!
内に隠しているはずの嫉妬心がつい出てしまって
イェンスはまたそこに吸い付く。
こんな痕……!
ちゅっちゅっと、何度も何度も口付ける。
「ん……んっ。」
そうすればきっといっぱい痕をつけた自分の勝ちになると
わけのわからない理屈の元、イェンスはその痕を精一杯舐めたり吸ったりいじったりする。
そのたびに小さな短い声をあげるキアにイェンスはちょっとだけ嬉しくなった。
しかし喜んでいる場合ではなかったようで……

「今日は、……っやけにがっつくなぁ。」
にやりとキアに笑みをこぼされキスをしかけられ
その不意打ちに唇をこじあけられて絡み合う舌と舌。
イェンスはそんな甘美な口付けに酔うようにまた全身が熱くなってしまう。
イェンスは振り払うようにまた首を振った。
しかしそんなことをしても逆に熱は煽られ、身体中を侵食していく。

「あっ、キア……っんん!」
知らず知らずのうちに強くなっていた爪の傷痕。
それはイェンス自身気づかない内に近くの紅い痕よりも
深く、濃く、鮮明に残っていた。

イェンスは自らその腹に自身を擦り付けてしまう。
「性急だな。」
キアはそう笑ったが、今はそんなことすら耳に入らないほど夢中になってしまっていた。
キアはイェンスの足元に引っかかっていたパンツを引き剥がすようにとると
自らもズボンのジッパーを下ろす。
今度はキアの方から擦り付ける。
白い先走りで濡れているお互いのものがぶつかりあって
たまらない快感を生む。まるで強い電撃のような。
手でしてもらっている時とは違う、荒々しいけど強い熱。

「ん……あぁ、や……ぁあっ。」
そろそろイェンスの自身が我慢できなくなってきていた。
焦らされて、たまらなくて、しとどにシーツにしみをつくっていく。
もっと強い衝撃で、中を満たしてほしくて。
そう思うとまた雫が垂れ、身体は素直にしみを増やしてしまう。
「キア……も、俺!」
ぎゅっとまた爪痕を深く刻んで、
「っ、挿れて……。」
荒々しい息遣いと濡れた声で艶めいた響きを立てながら
気づくと耳元でそう言ってしまっていた。
いつも強がりばかりのイェンスだが、こういうときはついぽろっと本音をこぼしてしまう。
「早く!後ろも……早くっ!」
そして一度本音をこぼしてしまった口は、とどまるところを知らないといったように
次々と本音をつむいでいく……

「焦んなよ。」
キアもそんなことをさらっと余裕はなくなっていた。
念のため後ろをそっと指で触れてみたけれど
そこはもう迎え入れる準備をとっくに終えていたようで……
「心配ないみてぇだな。」
キアは一瞬苦笑し、すぐにキリっとした男の顔に戻る。

「あ、ああぁぁぁっ!」

今までとは比べ物にならない衝撃。
待ち焦がれていたもので満たされる強い感じにイェンスは歓喜の声を上げる。
立てていた爪を首に回して、キアをぎゅっと抱きしめる。
どこにも行かないで、と。
いつでも一番近くにいて、と。

「ひっ、あ……あぁ、ん。」
キアは最初から強く突き上げてきた。
その度に濡れた声をあげてしまうイェンス。
ぐっちゃぐっちゃと水の音をたてて部屋全体に響きかせている。
「……っ、はぁ。」
「や、あぁ……ん、ひあぁ。」
もっと強くキアの頭を抱えた。
どうにかなってしまいそうな感覚に陥ってしまう。
もう何度も行ってきた行為で、慣れているはずなのに
この感覚だけはいつも変わらない。
「そこや……あぁ、んん!」
キアには知り尽くされているこの身体のいい場所を
不意に突かれイェンスは身を震わせて一際甘美な喘ぎを漏らし、
キアの髪を思い切りひっぱってしまう。
「ここ、……好きだろ?っておい!痛ぇーよ!」
痛い、といいながらも、それがほかのどんな奴も知らない
そんなイェンスの可愛らしい反応なのだとキアは目を細めた。

「あ、そ……んな、キア!もう……!」
イェンスは今にもイってしまいそうなのを我慢したように身をよじらせる。
「わーったよ、一緒に……な。」
ふっと笑みを浮かべてキアは締めの体制に入る。
ペースを一気に上げて何度も何度もその感じる場所を突き上げた。
そして最後に一番奥を……。

「き、キアああぁぁぁ!」

大きくあげた声とともに2人は果てた。

















―――後日。

今日も仲良くデート中。
「そういや俺、あの時虫に刺されてかゆくて参ってたんだけど、お前よく気づいて吸ってくれたなぁ。」
ありがとよ、とキアはご機嫌な顔でイェンスの頬にキスをする。
「ひ、人前で恥ずかしいことすんな!……って、それ……もしかしてこの間の……?」
キスされた頬が紅くなるのを悟られないように押さえながら
イェンスには同時に、嫌な予感がよぎる。
「そうそう、赤くなってただろ?お前の爪痕の傍だよ。」
「あれってほかの男か女かにつけられたキスマークじゃなかったのかよ!」
驚いてキアを振り返る。
そんなことをした覚えがある、充分すぎるくらいある
イェンスの頬はすぐに真っ赤に染まってしまって隠すどころではなくなってしまった。
キアはそんなイェンスの顔を覗きこむと、はーんとニヤニヤして
1人納得したように腕を組み、首を上下に振っている。
「お前、その実は誰でもない誰かに嫉妬してたんだー。」
しいていてば虫かな、と言ってそして大笑いする。
何もかもが図星だった……。
どう言い返していいのかもわからずイェンスはただ、うるさい、と幾度となく叫びながら
今度は両耳を押さえて左右に首を振った。

「そんなのお前が悪いんだろー!紛らわしいとこに虫にさされやがってー!」







それからしばらくこのことをネタに、イェンスはからかわれ続けることになってしまう。

























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でも大笑いが止まったらまだわめいてるイェンスたんをキアはすっと抱き寄せてキスするんだ。
それで嬉しかったぜ、笑いすぎて悪かったな……でまた甘い夜を過ごすんだ。
しかしこれ、キアが最初から確信的にやってんのかそうじゃないのかでかなり見方が変わってきそう…。
あーすっきりした。エロは疲れるけど楽しいな。










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