「で、俺の彼女ってばそんなこと言って俺びっくりだぜ、でもそこが可愛いんだよなぁ。」
「ノロケかー?俺たちすっかり充て付けられてんなー。」

ケタケタと絶えず笑い声が響く大衆のための飲み屋。
今日はチームメイトたちと優勝祝賀会と題した打ち上げに来ていた。




Tossing


「あぁノロケさ。なんたって俺と彼女はラブラブだからな。」
チームメイトたちの嬉しそうな顔がそこかしこに並んでいる。
程よい酒のためか、少しだけハイになっているチームメイトの1人が
そんな彼女とのノロケを言ってのけた。

「くぅ〜……羨ましいぜ……。」
また違うチームメイトが乾いた笑みをうかべてうなだれる。
横で何も言わずそんなやりとりを見ていたイェンスだったが
つい口を挟んでしまった。理由は自分でもよくわからない。

「そ、そんなんだったら俺だって!」
「お!ついにイェンスの1人に絞ったのか、オ・ン・ナ・ノ・コ!」
「あ……まぁ。」
本当のところオ・ン・ナ・ノ・コ、ではない。
でも1人に絞ったことは間違いではない。
当たらずとも遠からず……か。
ふっとため息をつくと、チームメイトがそんな顔を覗いてくる。

「なぁにため息なんかついてんだよ!恋人できたんだろ?」
そう、間違ってはいない。
認めたくねーけど……多分きっと、好きなんだ。
俺のこと捨てて欲しくない。ずっと傍にいて欲しいって思う。

考えていると凄くドキドキしてくるし、顔の筋肉が緩んでいく感じ。
「あ、おぅ。」
「なぁ、どんなコなんだよ?」
肩をどつかれながらつっこみを入れてくるチームメイト。
「可愛いこ?お前、前からそういうこ好きだったじゃん。」
可愛くない、そんな言葉全然似合わない。
「違うのか?それじゃあ……綺麗なこ、とか?」
綺麗でもない、あいつは……。
「なんだよー!だったらどんなこなんだ?」

何も言わない俺に隣に座っているチームメイトは不審な目を向ける。
「どんなこ……って。」
それは……。
「可愛くもねーし綺麗でもない、けど……けど好きになっちゃったんだ。」

なんていえばいいのかわからない。
あいつは……あいつは……。
「俺のことすぐからかってきてすげぇムカつくけど、無駄に格好良くて時々優しくて……。」
翻弄されるんだ。
どうしてこんなになっちゃうんだろうなんて、自分でも思うけど。

「おもしれー彼女なんだな!そんなこが好みだったなんて俺全然知らなかったぜ。」
驚いた顔でチームメイトは俺の顔を覗く。
結構面食いなのかと思ってたぜ、と笑いながら俺にそのまま酒をすすめる。
「俺だってそんなの、全然……タイプじゃねーはずなんだ!それなのに……」
それなのに翻弄されてしまう。
「イェンスー、顔赤いぜ。」
「酒飲んでるからだよ!」

結局のところ好きなんだよなぁ。
どんなに言い訳しても、答えはいつも同じところに辿り着く。
ずるいんだ、キアは!

そんなことを思っていると、隣のチームメイトが急に吹き出した。
俺の顔を見ては何度も何度も。
「なんだよ!何かおかしいこと言ったかよ!」
少しだけムッとして隣を睨むと、ごめんごめんと謝ってくる。








「ただよっぽど相手のこと好きなんだなぁって思っただけだって。」








俺の彼女へのノロケなんてまだまだだなぁ
そうチームメイトは頭をかいて苦笑を漏らした。

なんだか恥ずかしくなってしまう。
俺、そんなこといったつもりないのに……!
可愛くないし綺麗じゃないし、って。
くそーっ!

「あいつが悪いんだーっ!!!ああ、好きだ。大好きだー!!!」

本人を目の前にしたら言えるわけないから
お酒が入ったときくらい

素直になってもいい……よな。





















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落ちてない。でもどう落ちればいいのかわからないからいい。
イェンスのことノロけさせたかったの、目的が果たせたからオッケー。
ちなみに題名Tossingは翻弄って意味です。いつのまにか翻弄されてる…!

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