そうだ。
負けるなんて初めから思ってるから負けるんだ。
キアは男。
俺だって男。
だったら勝つか負けるかなんて
それこそわかるわけねーじゃねーか。
よし決めた!
俺は決めたぞ。
キアを抱いてやる!
俺の腕の中で喘がせてやる!
このイェンス=レヴィンをを舐めるなよキア!
舐めるなよキア!
そうと決まれば綿密に計画を練らないと……。
しかしそう簡単にキアを組み敷く方法を思いつくはずもなく
しばらくイェンスは頭を抱える日々を過ごすことになった。
こんなことを誰かに話せるわけもなく
かといってほかに情報入手の手段も思いつかず。
「はぁ……。」
思わずこぼしてしまったため息とともにイェンスは部屋の電気を消し
そして布団の中に潜り込んだ。
「あ、しかもなんだか今日の布団ちょっと湿っぽい……。」
……
…………
………………
「そうだ!寝込みを襲ってみるっての、いいかもしれねぇ。」
眠ってる内に縛ったりしちまえば俺に抵抗できねーだろうし。
我ながらなかなかの名案だと、イェンスは頬を緩ませた。
負ける気がしねぇ。
早速明日にでもキアに会おう。
会って今度こそぎゃふんと言わせてやっかんな。
想像しているだけで顔がニヤけてしまうイェンスだった。
「キア!久しぶり!」
いつものように愛車を止めた裏でそっと待っていると
キアが顔を覗かせた。
「おう、お前急に会おうだなんて言うから驚いたぜ。」
「な、なんだよ。別にいいだろ!」
いつものように言葉使いは粗野だが
態度だけは素直に出てしまうイェンスの顔はやはりニヤけてしまっていた。
「……?」
いつもと違うイェンスの様子に、不思議そうにキアはその顔を覗き込む。
やはり何かが違った。
いつもなら、何覗いてんだバカ!と怒鳴り込んだり、罰が悪くなると拗ねたり
どっちにしてもこんなことをすれば間違いなく何か反応を示すはずなのに……
今日のイェンスは相変わらず顔をニヤけさせているだけ。
「はぁ……ところで今日はどこ行くんだ?」
「どこってそんなの……へへへ。」
未だにヘラヘラしているだけのイェンスにキアはひとつため息をついた後
鋭い目つきになってその手をとり、いつもの場所に向かった。
「ヘラヘラ笑ってるだけならどこに行ってもいいってことだよな。」
「え……ってここ!まだ日も落ちてないぞ!わかってんのか!」
頭の中を妄想でピンク色に染めていると
気づかぬ内につれてこられたのは、もう見慣れたベッドの上。
「わかってるぜ。それにどこ行くって聞いて答えなかったのはお前だろ。」
「……っ!」
今やっと目が覚めたとでもいうように、イェンスは急に慌てだす。
「ちょっと……ちょっと待てよキア!早いってば!」
逃げようとしてももう掴まれた手が振りほどけなかった。
なんだか妙に固く握り締められているようで。
「キア……?」
今度はイェンスがキアを覗き込む。
しかしキアは何も答えずにその覗き込んできた顔に濃厚なキス。
「ん……んんっ、キアぁ……ん。な……に?」
そして今度は別の角度から噛み付くように。
あっという間に服を脱がされあっという間に身体に触れられて……。
「ちょっと…あ、んんっ。」
あっという間に奪われてしまった。
「あ、キアぁぁ……!」
「はぁはぁはぁ……はぁ。もう、キア!なんでこんな……今日は性急なんだよ……。」
有無を言わさず抱かれてイェンスはなんだかふに落ちないといった様子でキアにたずねた。
「お前……。その理由に関係して俺が聞きたいことがある。」
しかしその問いはあっさりとキアに切り返されイェンスはつい驚きくちごもってしまう。
「聞きたいこと……ってなんだよ。」
いつもの癖でイェンスが視線を逸らしながら恐る恐る聞くと
キアは怒ったような焦ったような声をあげた。
「折角のオレ様とのデートだっつぅのに会った時からヘラヘラして、何考えてたんだ。」
「あ……!」
キアにそう問われ、イェンスは今更になって当初の目的を思い出した。
さきほどまでそのことでずっと頭がいっぱいだったはずなのに
キアに抱かれ、その腕の中で喘がされ、何も考えられなくなって……。
イェンスは思わず顔を引きつらせてしまう。
「なんだ?そのマズイって顔は……おい、イェンス。どういうことだ?あ?」
「あ、いやぁ……。」
その声からキアがイライラしているのがわかる。
どうすりゃいいんだよ、どうすりゃ……!
あぁもう、だって仕方ないじゃんか!
「キアが抱きたかったんだよ!俺だって男なんだ!も……笑えばいいだろキアなんて……っ。」
開き直っちまった。
結局キアには勝てねーのかなぁ……はぁ。
本当は羨ましくてちょっとだけ嫉妬してるんだ。
「お前……はぁ、心配して損したぜ。結局俺に構って欲しかったわけだな。」
キアはため息混じりにそうこぼした後、その肩を抱き寄せて
そしてそっと小さく息を吹き込むように口にした。
「相変わらず可愛い奴だな。」
「く……っ。」
つられるように首を竦めて身体を震わせてしまうイェンス。
「何すんだよ!ったくもう!」
「けど、手がかかるやつほど可愛いってのは本当みたいだな。」
そしてまたすっとキアがイェンスの震える唇をなぞる。
「答えてやるよ、お前が望んでることにさ。」
「めいっぱい、また俺が可愛がってやるってこと。」
「ちょっ……んん、キアぁ……。」
そしてまたイェンスはそのキアの大きな腕の中で……
当初の目的はまた、どこかへ消えてしまったようだ。
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こちらは8000hitリクでともゆき様へ。
野望も妄想にて消えてしまってすみません。
やってやろうと意気込んでいるんですが結局手の上で転がされてます。
えっちなシーン省いてごめんなさい…予想以上に長くなってしまいまして。
読んでいただけたらそれだけでありがたいです。ではでは