「今日はキアと映画を見に行く約束をしてるから,だからお前はお留守番ね。」
そう,今日はキアと初めてのデート…
楽しみだなぁ。
映画館でぇと。
「で,何見るんだ?」
キアは公開中と書かれた映画のポスターをぐるりと見わたした。
僕が見たいのは結構しっとりしたロマンス映画なんだ。
事前に『お前の好きなものを見ればいい』と言ってくれたキアだけど
やっぱり楽しんで欲しいと思ったんだ。
活動的でじっとしてることが苦手なキアのことはわかっているから
あえて選んだのは派手なアクションホラー映画。
僕は本当はこういうの苦手だけど…
キアが喜んでくれるならそれでいいと思ったんだ。
「あれ見ようよ,キア!」
「お前あぁいうの好きなのか?」
案の定,不思議そうな顔をしてキアは僕の顔を覗き込んだ。
「え…うん,好き…だよ。好き。」
悟られまいと自分に言い聞かせるように何度も好きを繰り返した。
「まぁ,そこまでいうならいいけどよ。」
僕たちはチケットを片手に案内されたホールへ向かった。
しばらくすると幕があがり上映が始まった。
隣を覗くとキアはしっかり楽しんでくれているようだ。
好奇心に満ちた顔でじっとスクリーンを見つめている。
僕はといえば…
まだ始まってまもないのにもう怖くてたまらなくなってしまっている。
手も震えてきて足もガクガクしてきて…
それを必死に我慢しているような状態。
唇をかみ締めて,手はぐうにぎゅっと握りこんで,足を抑えて。
バレないようにしていたのに…
してたのに…
「我慢してんだろ,エドゥアルト…表へ出るぞ。」
耳元でそう囁かれ,人の前をさっと通り過ぎる。
ロビーのイスに座るとすぐのことだ。
キアの温かい手が僕の頬に伸びてきた。
「無理してんじゃねーよ,なぁエドゥアルト…俺のためだったんだろ?」
催眠術みたいだ…自然にうなづかされてしまう。
そうしたら,何も言わずに抱きしめてくれた。
震えも,ガクガクも,かみ締めすぎて流血した唇も全部
止まってしまう…魔法みたい。
神様はこんなことしてくれない,出来ない。
「エドゥアルト,目つむってみな。いいって言ったら目あけてみろ。」
されるがままに目をつむると何かが手の上にのって…?
「ほらっ,目あけてみな。」
ぱっと目を開くと…!!!!!
「僕がさっきまでじっと見つめていた映画のチケット!?」
気づいていたの?というような僕の視線にキアはクスクス笑って言った。
「お前わかりやす過ぎ!」
もう一度別のホールに入りなおすとしんみりしたロマンス映画が始まった。
じーんとして涙を流す僕の隣には
寝息をたたす僕の好きな人。
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エドゥアルトのエンディングシーンを見ていて無性に書きたくなったので書きました。
基本的にはBLゲーの二次創作は神無ノ鳥限定なんですが
こんな風に時々ふと書いたりするので…まぁあははってことで。
しかし書いてるうちにいつもいつも最初のコンセプトと変わるんですが…。
どうしたもんですかね,エドゥアルト(涙)