ささいなことで喧嘩して
その度に背中合わせになる。
口げんかしたり取っ組み合いになることだって
最近ではそんなに珍しくない。
その度にイライラしてすれ違う。
こんな関係を望んで一緒になったんじゃないのになぁ……。
今朝もまたどうでもいいようなことでぶつかりあってしまった青樺と朱緋真は
お互い謝るタイミングも掴めずにいた。
自分が謝ったらすぐに済むようなことだとわかっているのに
どうしてだろう、そんなひとことがいえない。
「……俺今夜はちょっと師匠のところに泊まるから。」
喧嘩するほどなんたら
そんなつもりはなかった。
ただちょっと修行に彰欄のところへ出向いていただけだったのに
朱緋真はなんとなく帰る気になれなくて
己の幻術を通して家にいるであろう青樺のところへと伝言を届けた。
青樺の顔を見る自分の顔
青樺の顔を見て口にする自分の言葉
どれも自然な仕草のはずなのにどれも不自然になってしまいそうな
そんな気がする。
「朱緋真！自分から修行に来たかと思えば全く身になっとらんじゃないか。」
「師匠……悪い。」
いつも笑顔を絶やさない朱緋真の顔には疲れの色が見えていた。
朱緋真自身気づいていないだろうが
そんな顔をする原因になるのは決まって一人だ。
「……で、今日はどうしたんじゃ？」
「師匠？」
何のことだろう
ため息をついて札に文字を書く朱緋真をを振り返る彰欄。
「修行に身が入らないのは大方青樺と喧嘩でもしたってところじゃな？」
図星をつかれ固まる朱緋真を尻目に
もう一度大きくため息をつくと彰欄は頭を抱えた。
「全くお前達２人はなんだってそんなに喧嘩ばかりするのだ……。」
「だって……良くわかんねーけどさ。」
実際何が原因かも覚えていないような些細な喧嘩を繰り返してばかりの朱緋真。
そんな朱緋真自身、何でこんなに喧嘩ばかりするのかわからないのだ。
「顔合わせるとつい何か言っちゃってそれで……何かいつの間にか喧嘩になっちまってて……。」
思い出すように朱緋真がぶつぶつと呟いていると
先ほどまで頭を抱えていた彰欄はいきなり笑い出した。
「はっはっは、なるほど。お前達２人はまだまだ若いのぉ。」
「なんだよ！師匠がものすっごい年上なだけだろ！多分！」
人が真剣になってるってのになんで笑うんだよ！
ちょっとムッとした顔で朱緋真が彰欄を見るとそういうことではないとたしなめる。
「なぁ朱緋真、“喧嘩するほど仲がいい”って言葉を知ってるか？」
「そりゃ……知ってるけど、それとこれと何の関係があんだよ師匠？」
わけがわからずまゆをひそめる朱緋真に彰欄は言った。
「要するにだ、お前達は仲がいいからこそ相手を構いたくなるんだろ？何か反応が欲しくて声をかけるわけだ。」
「まぁ……うん。」
少しだけ恥ずかしくて俯きながらそんな彰欄の言葉に朱緋真は耳を傾ける。
「そんな時相手は何をしてる？逆の立場のときお前は何をしてる？思い出せるな？」
「青樺は……勉強してたり、俺の時は俺が今みたいに修行してたり……かな。」
さらに彰欄は続けた。
「そんな時話しかけられるからイライラしてしまうんじゃないのか朱緋真。青樺も同じじゃ。」
「あ……っそう……か。」
そんなこと考えたことなどなかった。
自分が考えていたのは自分のことばっかりで、そんな自分は相手が好きだからこそ話しかけちゃうわけで。
なんだかちょっとだけ照れる。
「ノロケに来るのも大概にしてたまにはマジメに修行しに来んか全く！」
「わりぃ！師匠の説教聞いてる暇はなさそうだ！帰らないと青樺が待ってる！」
「コラ！朱緋真！」
そのまま朱緋真は一目散に青樺の待つ家へと向かった。
「ただいま青樺！やっぱり帰ってきた！」
そういって元気良く扉を開くとそこには青樺が作ったであろう暖かなスープが並んでいる。
「伝言は聞いたけどなんとなく帰ってきそうだと思って……作ってた。良かった。」
嬉しそうに微笑む青樺にぎゅっと抱きついて朱緋真は笑う。
「これも俺が好きだから俺のために作っててくれたんだよな？」
「そ、そうだけど。朱……朱緋真？」
恥ずかしい台詞をさらりと言う朱緋真に青樺が面食らったような顔をすると
朱緋真はまたこりずに言うのだ。
「俺も青樺が好きだからきっと青樺なら待っててくれると思った！」
好きだからこそ相手を構いたくなる気持ち。
それってきっと
―――こんな気持ち。
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大分遅くなってしまって申し訳ありませんでした。
こちらは9000hitキリリクの品で_ア様へ。
どたばたしてるけど最後は甘甘で…ってことでしたがいかがでしょう？
…本当すみません。青樺の出番少なすぎで代わりに彰欄でばりすぎです。
喧嘩するのは仲がいい証拠！我が侭言い合えるのも心を許せてるから
ってな話にしようと思ったんですけど…上手く伝わりましたでしょうか…？
喜んでいただけたら幸いです。
何より彰欄の口調…違う気がするんですけど…。