タイトル『バレンタレイニー』






1つのことに集中すると、周りが見えなくなってしまう悪い癖。
今日もまた、出ちゃった。
大好きなあの人のために一生懸命作った本命チョコなのに、
渡せないで終わっちゃうのかな……。

しとどに降る雨を見上げて私は立ち尽くしていた。
チョコを作るのに必死で天気予報なんか確認してなかった。
あぁこれじゃ、帰れない。
手にしているのは本命チョコ。
あの人は同じクラスで、ずっと見ていたのに。
ほんの小さな勇気が出せなくて結局渡せなかった、そんな本命チョコ。

なんか、私みたい……。

薄暗く広がる空から落ちてくる水の雫。
私自身もまた、泣いてしまいそうだった。
ほんの少し前に進むことにすら、怯えてしまう自分。




「おい、何やってんだ?
ぼーっと物思いにふけっていたら後ろから誰かの声が聞こえてきた。
「何って……雨で帰れなくて……」
振り返りもせず、それとなく答える私。

……ん?

聞き覚えのある声。
今、聞きたくて、聞きたくなかった声……あ!

「わっ、二宮くん!」
「なんでそんな驚いてんだよ!」

振り返って視界に入ったその顔は、
会いたくて、会いたくなかった彼の顔。
「だ、って……二宮くんだったから」
ようやく状況が飲み込めてきて、慌てて手にしていたチョコをしまった。
ちょっと不自然だったかなと心配したけれど
幸い彼は気づいていない様子で、ほっとする。
「オレだったから?」
彼は案の定よくわからない、といった表情を浮かべる。
私が笑ってごまかそうとしていると、何を思い出したのか
かばんの中をがさごそと何かを探し始めた。
そして私の目の前に、小さな折り畳み傘を差し出した。

「ほら使えよ、俺置き傘あったんだ」
思わずそれをぼーっと見つめてしまった私に
困ったような顔を浮かべながら
彼は私の手にそれを、握らせた。
「雨降ってかえれねぇんだろ?」
ひとつくしゃみをすると、また教室に戻っていこうとする彼。

「まだ、帰れない!」
大声で彼を引き止めた。
どうしてだろう、あんなに勇気が出せなくて落ち込んでいた自分が嘘みたいに
簡単に彼に声をかけることが出来た。
彼の傘から不思議な力がふいにわいてくるように。
「まだ私、大切なことしてない」
その場で歩みを止めていた彼の方に走り、
今度は私が彼の手に、その包みを握らせる。

「……俺に?」
なりゆきでそうしてしまったけれど、今になって急に心臓が早鐘を鳴らしだした。
何も言えなくなって、私は更にそんな彼の指にぎゅっと力をこめて
包みを強く握らせて
「傘、ありがとう」
そんな的外れなことを答える。

することをしてしまったら、もう目を見ることも出来なくなって
私は一目散に、逃げるように走りその場から放れる。
まだ心臓がドキドキするのは、走ってきたからなのかそれとも……

そんな彼の傘をさして空からの涙を切る。
たまにはこんな悪い癖も、ありかもしれない
そんなことを思いながら。



あぁまたお話しする口実、出来たかな。
















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070214 ギリギリでした…。二宮くん呼びがちょっと新鮮です。



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