タイトル『幼き日の想い出』
「ねぇこれなぁに?」
「これは焼きいもだ」
「焼きいも?」
「あぁ焼きいもだ」
そう言って彼は大きなむらさき色の焼きいもを半分に割ってくれる、
すると中身はびっくりするくらい黄色くて湯気をたたせていて
そんな当たり前のこと、と思われるかもしれないけれど
幼かった当時の私は心から驚いたものだった。
「わぁ〜すごーい!」
こども心には宝石よりも輝いてみえるあたたかな焼きいも。
なぜかとってもドキドキした。
「ほら、食えよ
」
「う、うん!」
ちょっぴりそっぽ向きながら、渡してくれたと思ったら
いつの間にか食べやすいように少し小さくしてくれていたミズくん。
そのむらさきをさっと手にとったら凄く熱くて、慌てちゃったっけ。
「熱っ!」
何分初めての経験だったから仕方なかったのかもしれないけれど。
「ちょっと貸してみろ」
そしたらミズくん、困った顔してそのむらさきをまた自らの手に戻して
息をふきかけてた。
ふーふーって。
「ほら、これで熱くないぞ」
一緒に皮も剥いてくれて食べやすくしてくれて
恐る恐るそれをまた手にとったら、今度は本当に熱くなくなってた。
「あんなに熱かったのに、もう大丈夫になってる!」
黄色いところをかじってみたら、
とても柔らかくて美味しくて、お口の中が甘くなる。
「ミズくんの手、魔法みたいだね!」
「な、何言ってんだよ!母さんたちが用意してくれたんだろ」
「それでも熱くなくてして
が食べられるようにしてくれたの、ミズくんでしょ?」
そのほっぺがなんとなく赤く見えたそのときの私は
ミズくんの手から焼きいもをとって同じように息を吹きかけた。
「ミズくんとおんなじおまじない!」
面食らったような顔をして、それから少しだけ笑ってくれて
ミズくんは私の手も魔法の手なんだと教えてくれた。
嬉しくなってママに
の手は魔法の手なんだって言ったら笑って撫でてくれて
あのときの私はまっすぐに信じてた。
「おいしいね」
「あぁ、おいしいな」
ほくほくして、心もあったまるおいも、
かじりつくようにいっぱいいっぱい食べた。
それから落ち葉を片付けて、帰り道を一緒に歩いた。
はぐれないように魔法の手、繋いで。
また一緒に作ろうって絶対約束だって、指きりした。
魔法の手は2人だけひみつのたからもの。
―――秋になると思い出す、幼い2人の想い出。
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060924 今の2人の関係をご想像の上で…
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