タイトル『1位は譲れない!』
人気者のあの人には私の姿なんて映ってないことは目に見えてるの。
だから今度の体育祭は見せ場なの!
絶対に絶対に私の姿も名前も覚えさせてみせるんだから!
だから……!
「私がやります!リレーのアンカーは私がやります!」
ちょっとだけ打算的な立候補で申し訳ないと心の中で謝りながら
私は名乗りをあげた。
このリレーというのは学校の中での選抜形式で
一番盛り上げる,人の注目を浴びる種目だ。
女の子には目もくれない彼だけどきっと
ここまで出来たら注目されたらきっと私を見てくれるはず。
―――守くん。
だけど注目されるためには出るだけじゃきっと駄目。
そのためには何としてでも1位をとらなくちゃ。
今回の注目どころ
橘さんや早川さんにも勝たなくてはならないのだ。
正直かなりキツイ。
「……でもきっと……なせばなる!」
それから私の地獄の練習の日々は始まった。
「うぉっしゃーっ!負けるかファイト!」
毎日のようにこんな無意味な鞭を自分にたたきつけ
うさぎ飛び
タイヤ引き
筋肉トレーニングのための事務通い
そしてもちろん走りの練習
気合の入った仲間たちとバトン渡しの練習も。
無理な疲れがたたらない程度に精一杯頑張って
いっぱい眠った。
もちろん心配でもあった。
もしかしたら……っていろいろと考えもあって怖かった。
でもだからって考え込んだらきっと負け。
「負けないっての!」
―――そして当日。
「負けるかオーッ!」
玉入れや綱引きに徒競争
多くの種目が過ぎていく中
だんだんと近づくクライマックス
その花形のこのリレー
『次は男女混合リレーになります』
ついに放送が入った。
負けられないこの時が……
この胸の高鳴りが
私の想いをあらわしているように。
これだけ練習したんだ大丈夫って期待と
スポーツ万能の橘さんや早川さんに
追いつくことなんて出来るんだろうかって不安とで。
でもそんなこと考えてる余裕もなく
もう自分にバトンはまわってくる。
互角の早さ
そう
私で決着がつく
相手は橘さん……
上等じゃない
「負けないんだからーっ!!!」
見て欲しい!
私を目に映して!
懸命に走った。
同時に渡る私達のバトン。
抜きつ抜かれつ走る私達。
絶対に負けない!
負けたくないもの!
そのために今まで頑張ってきたんだもん!
「んにゃろーっ!!!負けっかよーっ!!!」
走った。
ただもう無我夢中で必死に走った。
でも……
「はぁ〜…負けちゃった。」
体育祭が終わって結局橘さんに負けてしまった私は
芝生の上にねころんだ。
きっと2位なんかじゃ相手にされてないんだろうなぁ……。
人気者でいつだって完璧を目指す彼に
私は完璧でいられなかったんだもの。
そしてそんな私をたずねてきたは意外な人物だった……!
「ねぇあなた…
さんよね?お互いお疲れ様。」
「橘さん……?」
先ほどまでお互い負けじと張り合っていたライバル。
「これ……飲まない?」
そういって彼女が差し出してきたのはよく冷えたオレンジジュース。
「あ,ありがとう。」
驚いてる私を見て彼女は慌てて繕った。
「別に笑いにきたとかそういうんじゃないからね。えっと……風の噂で聞いたんだけど。」
安心してふと振り向けば彼女は私に続ける。
「あのね,あなた猪狩くんのこと好きなんだって?」
「え!?」
唐突に突かれ私は物凄く驚いてしまった。
だって……どうして橘さんが知ってるの?
「猪狩くんあなたのこと凄いって絶賛してたよ。」
ふふっと笑みをこぼして橘さんは私を見る。
「私のことなんてもう全然聞いてくれなくてさ,参っちゃった。」
ぎゅっ
「脈アリなんじゃないかな?……頑張れ!」
彼女が私の手を握る。
「今日くらい頑張ったらきっとイケるって……私も手伝うからさ。」
頑張る女の子って親近感わくの,私も好きだからと
彼女は私に耳打ちして。
こっそりと野球部がよく見えるとっておきの場所を案内してくれた。
「あの……ありがとう。」
「ん!」
結局1位を勝ち取ることは出来なかったけど
だから今度こそは絶対に絶対に1位を勝ち取る!
あなたの横に笑っていけるように頑張るから
―――待っててね。
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久々の更新ですねこちらも。
遅くなっちゃってごめんなさい。その上なんじゃこりゃ;
どっちかいうとゲストキャラのみずき嬢との友情話みたいですね。
守兄貴出てきませんし。
読んでいただきありがとうございましたです(ぺこり)
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