タイトル『最後の夏』















高校最後の夏。
結局甲子園への夢は目前に迫ったにもかかわらず
儚く散ってしまった。

何人もの部員が泣き崩れ
またある部員は必死に涙をのみ
切なさにただ打ちひしがれた。

そう,そして彼も例外ではなく
ずっと私に謝り続けた……
















「甲子園連れて行ってあげられなくてごめんな……。」















私もそんな彼の気持ちが痛いほどよくわかるから
どうしていいのかわからずに
ただ彼の手をずっと握り締めていた。

いつだって泥だらけになるまで白いボールを追いかけて
少しだけ跡がついているその手。
大きくて重い金属バットをいつだって握り締めていて
硬くごつごつしているその手。

私の大好きなあなたの手。

「それならねぇ……私と甲子園に行こうよ。」














夢だった甲子園のマウンドにたった彼の姿が見たいなって
唐突にそう思った。
別に本物の試合じゃなくたっていい。

「じゃあ私が投げるから,打って打って!」
「え?本当に ちゃんが投げるの?」

驚いた表情のまま彼も言われた通りマウンドにたつ。
そして私もそんな彼に向けて懇親の一球を投げた。

……ぼわ〜ん。

あらぬ方向へ飛んでしまって彼はつい吹き出してしまう。
私はこんなはずじゃとぽりぽりこめかみをかいた。
「……って優くん!笑わないでよもう〜っ!」

もう一度私は今度はまっすぐに前を見てひゅっと投げた。
ちょっとだけ肩が痛くなるくらい全身に力を込めて……

カキーン!

弧を描きながらも彼の元へストレートボール
彼もそんな私のボールを綺麗にライト前へ飛ばした。
ヒットだ!

肩をちょっとだけ片手で押さえた私は
バットを思い切り振ってすがすがしい顔を見せた彼は
同時に思い切り笑った。

「さすが優くんだね!」
ちゃんも上手いよ!」

へへへ……ふふふ……

それから夢中になって私たちはこんなゲームを続けた。
やっぱりまたへにゃっとしたボールが行ったり
時には彼がホームランに近いあたりを出したりして
何度だって大きな声を上げて私たちは笑った。














「ふぅ〜疲れたねー!」
「だな!けど楽しかったー!」

甲子園の土にまみれ,そして最後にはこうして2人でマウンドに寝転んだ。

もちろん観客なんて誰一人としていないけれど
大きな声援だってひとつも聞こえるはずないけれど
それでも甲子園の土は私たちを迎えてくれた。

彼を……優くんをキラキラ輝かせてくれた。

「甲子園につれてきてくれてありがとう,優くん。」

彼は一瞬驚いたような顔をしたけれど
すぐににこっと笑って私に伝えてくれた。

も……ありがとう。」

って。














―――こうして私たちの高校最後の夏は幕を閉じた。
















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ということで9月なので夏の終わりのお話でした。
ただ優くんだと誰だか一瞬わからん感じですね(笑)今更ですが猫くんですよ。
猫くんで高校だから帝王実業のお話ってことになりますね。
これはでももしかしたらピッチャーのコの方が良かったかなぁ。
まぁいいか,お待たせしてしまってすみませんでした。
気に入ってもらえたら幸いです,ではでは。


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